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2024年4月3日

人材から人財への道のり::Vol.74::PDCAのCについて

仕事においてPDCAサイクルを適用し、効率的に業務の質を高めることは容易に想像できます。しかし、理論を理解しているとしても、実際にどれだけの社員がこれを実践し、努力を重ねているかは疑問です。PDCAサイクルを効果的に回すためには、定期的なチェックが最も重要です。定例会議でのチェック作業は、今後のアクションプランを策定する目的で行われます。会議では、Do(実行)フェーズで取り組むべきアクションを決定し、その後、Check(評価)フェーズでチェックして、Plan(計画)フェーズで修正や計画を練ります。予定していたパフォーマンスと実際の成果の比較チェックは非常に重要であり、これは管理者や経営者の役割として特に重視されるべきです。しかし、ベトナム人の中間管理職では、このチェック機能が満足に機能しているでしょうか?

少なくとも私たちの会社では、期待しているレベルに達していません。期待していた会議でのチェックと方向性の修正プランニングが実施されず、結局CAPはただの現状報告に終わってしまうことがほとんどです。このチェックが十分に行われていない理由について、どう思われますか?

タスク管理に関して、大きく二つの種類が存在すると考えられます。便宜上、上司(部長)をAさん、直属の部下(課長)をBさんと呼ぶことにします。タスクは全てBさんの責任範囲内にありますが、これらが完了しない場合、Aさんの業務にも影響を及ぼします。一方で、Aさんに直接影響しないBさんの部署内のタスクも存在します。前者のタスクは、完了しなければAさんに影響するため、Aさんは進捗管理を厳しく追求するでしょう。しかし、後者はAさんにとっては直接関係がないため、Bさんが自己完結させるべきタスクです。直接Aさんに関係しないとしても、計画通りに進まなければ組織全体に影響を与え、Bさんの自主性の発展にも悪影響を及ぼすため、Aさんが気にかけて催促することもあるでしょう。特に、ベトナムの日系企業においては、若いリーダーや課長が多く、彼らがタスクを適切に管理することが求められますが、リマインダーがなければ放置されがちなこともあるでしょう。しかし、この状況は理解できないわけではありません。中間管理職であるBさんは、プレイングマネージャーとして日常業務に没頭しており、PDCAサイクルを回す余裕がなかったり、時間管理が不十分で後回しになることが、最も大きな理由ではないでしょうか。

タスク管理には外部からの監視と管理が必要です。重要だが緊急ではないタスクに関しては、Bさんではなく、第三者による客観的なチェックが効果的です。では、このチェック機能を誰が担当すれば良いのでしょうか?理論的には、上司であるAさんが担当可能ですが、これには様々な弊害があります。Aさんはより高いレベルの経営課題に集中すべきであり、基本的なタスクを催促するのは本来の任務ではありません。直属の上司からの催促は大きなプレッシャーとなり、次回からは催促されないように努める者もいれば、上司との距離感が近すぎると緊張感がなくなり、適当な仕事をしてしまうこともあります。ベトナム人の組織感覚は日本のような厳格な階層を想定しておらず、フラットな組織で上司とフランクに接する傾向があり、緊張感を維持するのが難しいです。よって、第三者による客観的で正確な監視が最も重要な役割となります。この第三者は、感情を抜きにして仕事の期限やアウトプットの評価などを客観的に判断することが求められます。

タスク管理とその進捗のチェックには、ITシステムやAIを活用するアプローチも考えられます。これらの技術は、確かに効率的な監視とリマインド機能を提供する可能性があります。しかしながら、システムが用意されていても、その利用者が自ら能動的にデータを参照しに行かなければ、その効果は半減してしまいます。特に、タスクのチェック自体を面倒だと感じている人たちにとっては、いくらシステムに投資したところで、それを有効に活用しなければ何の意味もなしません。そのため、ややアナログなアプローチではありますが、タスク管理とリマインド機能を人間が専門に担当することが最も効果的だと考えられます。人間による管理では、システムのアラート以上に、直接的な催促が可能であり、これは受け手にとって相応のプレッシャーを伴うため、より有効性が高まります。

このプロセスを支援するためには、人事評価制度の導入も重要です。人間は、やらなければならないことに対して明確な動機付けがなければ行動を起こさない傾向があります。限られた時間の中で最大の成果を求める場合、自分にとって重要かつインセンティブのあるタスクに集中するのは自然なことです。そのため、重要だが緊急ではないタスクに対しても、適切な評価とボーナスによる報酬を設定することで、その取り組みを促進できます。

さらに、タスクを担当するBさんの意識変化も重要な要素です。多忙を極める仕事のできる社会人ほど、緊急ではない課題に時間を割くことに対して当初は消極的かもしれません。しかし、適切なタスク管理とリマインドにより、日常の忙しさに流されることなく重要な課題に集中できるようになると、仕事の効率が向上し、継続的なパフォーマンスの向上につながることに気づくでしょう。このように、意識の変化とそれに伴う成長は、中間管理職のBさんにとって、より高いレベルへの挑戦を可能にする要素となります。

Aさん(上司)にとって、この新しいアプローチは、従来の直接的な部下のタスク管理から段階的に距離を置くことを意味します。今まで、期限を守らない部下に対して怒ったり、十分な準備をしていない部下に不満を示すことが多かった状況から、徐々に解放されるのです。適切な距離感を保つことで、互いに過度なストレスを与えず、上司は部下を褒める機会を増やし、部下も上司を納得させるパフォーマンスを発揮する余地が生まれます。

PDCAサイクルにおける、多くの人が敬遠するチェックの「C」については、その評価基準を人事制度として明確にすること、そしてタスク管理の「C」を専門に担うスタッフを配置することを推奨します。これにより、仕事の質を向上させると同時に、当事者間の緊張感を犠牲にすることなく適切な距離感を保つことが可能となり、バランスの取れた職場環境を実現できると考えられます。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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