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2022年5月13日

人材から人財への道のり::VOL 54::加点方式VS減点方式

人事評価において、加点方式と減点方式があることはご存知かもしれません。加点方式はスタートを0点とし、仕事の成果が多いほど点数が加点されます。一方、減点方式はスタートを100点とし、仕事でミスをすると減点されます。つまり、主体的な行動喚起を促すのが加点方式で、行動を指示通り正しく行うことを促すのが減点方式となります。

考え方によっては、自尊心を高める加点方式と自尊心を傷つける減点方式と言えます。

多くの日系企業(または日本人の経営管理者)はどちらかというと加点方式を好んでいるように感じています。業務上ミスしても減給せず、成果を出した社員に対してボーナスを与えて、全体の士気および社員の自尊心を高めていくわけです。

私もこの考え方に賛同して、10年以上この考え方に沿って経営してきました。そして、社員によく罰を与えて、減点方式で経営している友人を見て、違和感を感じて、内心では自分の経営手法のほうが優れていると思うことがありました(笑)。ところが、ある出来事で私の考え方が変わります。

弊社では通常業務の中で日常的に行う固定業務があります。15分もかからない仕事ですが、放置すれば日毎に溜まっていき、作業全体の質をかなり押し下げる結果になります。

仕事にとりかかる意義は幾度も説明をし、担当リーダーもチェックしているので、やらない理由がありませんが、実際問題として長い間つまずくことがあります。リーダーにリマインドされたらやるが、リマインドされなければ平気で放置し、スタッフがリーダーに仕事(=リマインドすること)を作っている意味では、リーダーとスタッフの立場が逆転しているようにも感じます。次第にリーダーも疲れはじめ、表情も険しくなります。リマインドされずに自主的に作業ができているスタッフに対して、ボーナスを与えるような加点方式も考えられますが、できて当然の作業なので、減点方式の罰則規定を導入しました。罰則閾値や減給水準に関してはスタッフに決めさせ、導入してみたら、一瞬にして作業が毎日完璧にスムーズに行われ、滞っていた以前の状況は何だったのだろうと不思議に思うほどでした。リーダーも生産性の低いリマインド作業から解放され、明るい表情を取り戻している様子でした。

仕事上でマネージャークラスの登録者とよく意見交換をしていますが、非日系出身のマネージャーたちはよく、日系企業のスタッフは主体性が低い、規律がない、甘えている、などとマイナス評価をすることが多いように思います。上記のエピソードのように、罰則がないため、上司(マネージャー)に言われなければ、動かない組織もあるのではないでしょうか?生産性の低いリマインド作業ばかりやっていると、次第にマネージャーもやる気をなくして、最終的には退職に踏み切ることも容易に考えられます。それは加点方式の弊害と言えるかもしれません。

冒頭で自尊心を高める加点方式と自尊心を傷つける減点方式と言いましたが、全員が自尊心を高めることを目的にしているわけではないのかもしれません。ポジションが上になるほど、衣食住が満たされ、次第に自尊心の成長を目的としますが、衣食住が満たされていないレベルでは自尊心よりは毎日の収入、所得の確保や資産形成を第一の目的にするはずですので、スタッフ層には減点方式、リーダーやマネージャー以上は加点方式が合理的ではないでしょうか?

ご参考になれば、幸いです。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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