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2024年1月12日

人材から人財への道のり::Vol.71::問題提起が仕事である

皆様の会社では会議はどのようなスタイルで実施されますか?
私はこれまで7年間日系企業で働いた経験がありますが、だいたい下記ように会議を実施しています。

①一所懸命資料を作成します
②事前に回覧しますが、ほとんどはフィードバックがありません(しないケースもあります)
③会議では事前に資料を読んでいない人もいるので、丁寧に最初から最後まで説明します
④要所要所をトップに指摘され、回答できなかったポイントは次回のミーティングに持ち越します
⑤会議終了後、書記担当が一所懸命議事録を作成し、メールで関係者へ共有します

皆様の会社ではいかがでしょうか?

このスタイルをそのままベトナムで実施すると、途端に会議の質が落ちてしまいます。なぜでしょうか?
まず、シンガポールの父と言われているLee Kuan Yew(リー・クアンユー)氏が日本人に対して「この国民は何をさせても、プロ級の成果を出そうとしている」(Lee Kuan Yew自伝、第2巻より)と言っているほど、こだわって資料を作成するので、本人にとって最高品質の資料を用意して準備し、会議に臨みます。そして、会議中に指摘されるポイントは自分の仕事をより高いレベルにするためのものだと理解して、ありがたく受け取り、さらに良い成果を出すように努力します。次もまた力を出し切って資料を用意し、会議に望みます。少なくとも日本人はこのようなイメージで仕事をしていると私は思っています。

今度はこのプロセスをベトナムで実施すれば、どういう現象が起きるかというと、資料にはこだわらないので、会議の時間になったから、既にあるもので会議に臨むというスタイルで行われます。そこで、せっかちでお人好しの日本人は一所懸命手取り足取り説明します。最後に分かりましたかと尋ねて、ベトナム人スタッフが感謝の気持ちを込めて、はい、分かりましたと和気あいあいした雰囲気で会議を終了します。次回の会議もおそらく、同じスタイルで行われます。

こうすると、いつまでたっても日本人がすごい、ベトナム人スタッフが日本人の指示の下で仕事が行われ、ベトナム人スタッフが主体的にならない、という構図が続きます。ある意味では日本人のお人好しさがベトナム人スタッフの主体性を発揮させないとも言えます。シニアレベルで仕事が一人で行えるような幹部クラスは上記のようなことはないと思いますが、スタッフレベルで、これから幹部を目指す人材では上記のような現象がよく起きていると思います。何か手を打たないと、いつまでたってもスタッフレベルのままで、幹部まで育たないということになってしまいます。

では皆様はどうすれば良いと思われますか?

私は会議の前提から教える必要があると考えています。会議で教えてもらえるのではなく、自分の意見を提案する場であることを再定義する必要があります。考えるのは担当者自身であり、ボスではないことを重々に伝える必要があります。それでもすぐは理解されません。今までと同じように事前準備がされていない、質の悪い資料が出されてきます。日本人相手なら、すぐに再提出をさせるところですが、冷静を保って、これは評価するレベルにまでも達していないことを伝え、いつ自信をもって資料を提出できるかを聞き、会議時間を変更します。そこから、資料の品質が改善されていきます。こうして、担当者が考えることを理解していきます。

それでも、道半ばです。なぜならば、それだけでは説明する資料になるが、まったく提案がありません。問題提起もなければ、ソリューション提案もありません。

今度は、問題を発見して提案するのは担当者の責任だと教える必要があります。ですが、言葉では理解していてもアウトプットはまた別物で、尋ねてもほとんどが「問題ありません」と言います。これでは会議をする必要がありません。「会議を打ち切りましょうか」と言うと不安げな顔をします。さらに、「問題発見は中間管理職の仕事であり、問題がないというのは管理する仕事がない、あるいは責務を果たしていないとあなたは思っているのでしょうか」と言うととても嫌な顔を見せます。では、今度から、報告書と言わず、「提案書」と名付けましょう。そして、提案書の冒頭には「問題」と「提案」を書きましょう。そこを中心に議論します。議題がなければ、会議する必要はないが、仮に私が問題発見できたら、あなたのお給料の一部をもらいますよと感情抜きで、平気な顔で伝えます。

そこから、会議のスタイル、スタッフの主体性がかなり理想の形に近づいてきます。30分~1時間かかるような週次確認会議が、15分~30分で終わるようになりました。ほとんどは問題とソリューションの妥当性を確認して、ほめて、助言して、会議を終わりにします。

単なる弊社の担当者の質が良くないから、私が苦労している面も否定できませんが、指導方法次第で、良くなっていくので、ご参考いただければ幸いです。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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