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2022年7月6日

人材から人財への道のり::VOL 56::宴会部長

日本で働いていた時、歓送迎会を含む社内行事の多さ、そして、その入念な準備がとても印象的でした。勤務時間中に一生懸命上司の好みを考慮してお店を選び、人間関係に配慮した席順、スピーチの順番、2次会会場の手配などで忙しい先輩を見て、そこまで配慮する必要があるのだろうか? きっと仕事に集中できないだろうから、気の毒に感じていました。日本の文化ではあるものの、生産性が悪そうなので、無くしたほうがよいというのが当時の思いでした。

それから数年後、日本を離れてベトナムで仕事するようになり、中小企業ではあるものの、上司の立場となりました。歓送迎会は少なく、代わりに誕生日会、月次定例会、忘年会などがありますが、上司だからといって特別な配慮をしてもらった記憶がありません。むしろ、幹部たちは先に会場に着いてスタッフを待っている状況が一般的ではないでしょうか?そして、スタッフは自分達のグループで和気あいあいとして、ビールの一気飲み、ラッキードロー、ミニゲームを楽しんで、自己都合で早退する者もいて、上の人と交流する意識は低いように思います。

このように、日本の宴会とベトナムの宴会のスタイルは違います。
日本の宴会は特別に凝った仕掛けはあまりありませんが、準備や細かい配慮を行うことで失敗がなく、みんなが会話を楽しめるスタイルだと思います。一方で、ベトナムの宴会は催し的なもので、ラッキードロー、ミニゲーム、場合によってはカラオケ大会などで、みんなで楽しむものです。ですので、日本でいう宴会部長でいうと、入念な準備や配慮が最も求められる要素で、社員が担当しますが、それに対して、ベトナムではMaster of Ceremoniesを略して、MCと言い、舞台に上がってうまく場を盛り上げることが最も大事な要素であり、イベント会社に外注することもよくあります。

人事の世界でこの宴会部長の役割を含む言葉として、"Employee Experience"という概念があります。「従業員体験」と訳され、社員がする企業内での経験全てを指します。会社での生活(体験)の質を高めるのが狙いです。関係する施策としては、社員間の交流促進、仕事のアサインメント、評価など多岐に渡りますが、交流促進という意味で、宴会部長の役割がとても大きいように思います。

また、最近では別の言葉として、"Chief Happiness Officer"を略して、CHOという役職も近年アメリカのシリコンバレー企業を中心に注目されています。従業員の幸せ(Happiness)を第一に考える幹部を登用するという意味では、企業の本気度がうかがえます。日本企業での事例はまだ殆どありませんが、コンサルタント会社の発表によると、CHOの役職を設けてから売上が前年比で40%増え、社員の定着率が90%まで上がった米国企業もあるそうです。CHO一人だけではなく、各部署に社員(同僚)の幸せを考える社員がいたり、幸せを向上する企業文化がよいと言われていますが、これは日本の宴会部長の役割に近いように思います。当時は生産性の悪いシステムだと思いましたが、今考えるととても良いシステムですね。

とはいえ、弊社の社員に誰かを選んで、宴会部長をさせる自信がありません。見本になる宴会部長がいませんし、自分たちが配慮され、もてなされるような会に出る経験もありませんので、期待されて酷でしょう。それよりは得意としているイベント事を増やす方が自然でやり易いと思っています。

・社内イベントをしっかりと社員へPRする
・顧客向けイベントも顧客のみではなく、全社員へも情報共有、PRする
・宴会ではただ飲み食いするだけではなく、交流を促進するようなミニゲームを実施する

社員全員がそれぞれ自分のHappiness、同僚のHappiness、会社のHappinessを考えられるようになるときっと楽しい会社、社員が望む会社になるはずです。そんな会社を目指して、頑張りたいですね。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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