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2020年3月11日

人材から人財への道のり::VOL 30::断らない従順な社員

以前、日本人友人に、とある質問をしたことがあります。ベトナム人スタッフにもっとも持ってほしいスキルは何ですか?予想通り「ホウレンソウ」だと答えてくれました。スタッフに仕事を任せたら、できるかどうか、その進捗と結果をタイムリーにフィードバックしてほしいところです。とくにマルチタスクが求められる環境では細かいタスクが多くて、スタッフから能動的にフィードバックがなければ、管理者の負担が多いわけです。

そのフィードバックの種類を考えるとき、そう複雑なものではない。①できました、確認してください、②期限を延ばさせてください、③わからないことがあるので、教えてください、④もういっぱいいっぱいなので、引き受けられません。そのぐらいでしょうね。その中でベトナム人スタッフが圧倒的に不足しているのは断る能力だと思います。

実はあまり断らない性格で、サービス業において、日本よりもはるかによかったりするサービスも多くあります。例えば、長距離バスだと、巡回して拾ってくれたり、デポではないところに降ろしてくれたりします。ネット通販ではチャットが主流(問い合わせしたら、すぐ返事もらえる)で、デリバリーなどを個別に対応してくれます。市場でも行くと、野菜、肉などをいくら少量でもこころよく売ってくれます。そして、路上駐車しておいて、そこら辺の守衛さんにお金を払うから、見張っておいてくださいと頼めれることなどなどです(笑)。ルールが多すぎて、融通の利かない日本も異常ですが、ベトナムのように、こちらから言って、土壇場で特急サービスをしてくれるのも嬉しいが、もしキャパオーバーになるくらいだったら、安定なサービス提供を考えて、最初から断ってほしいところです。

そもそも人間は断る能力は自然と備わっていると考えています。

子供が肉が好きで、野菜が嫌いや音楽好きで、スポーツが嫌いのように嫌いなものは断れるものです。しかし、ベトナム社会(とく私が小中学校の80年代ごろ)では親が絶対な存在で、基本的に親の好みに合わせられます。学校へ行ったら、今度は先生が絶対であり、逆らえない。出る杭が打たれるような環境で長くいると自分で判断する力が弱って、すべての判断は上司任せになり、溺れそうになっても仕事を引き受け続けることが起こり得ます。最後には本当に溺れて、自信喪失に陥って、職場から離れるケースは少なくないように思います。

ベトナムに戻って、仕事したときのことを思い出すと、当時の日本人上司はとても仕事のできる人で、アイデアマンだし、結果追及も半端なくきついわけです。自分はあっという間に仕事で溺れる状況に陥りそうになったため、当時の私は必死に仕事を断りましたね。当然、怒られないように論理武装して、断りました。次第に自分も仕事に慣れて、キャパも大きくなり、だんだんと期待された通りの仕事ができるようになりました。部下がパンクする寸前まで仕事を与えて、一気に部下を成長させる。溺れるか泳げるかが日本的な育成方法かもしれませんね。この育成方法が機能するためには二つの前提があります。①辞めないこと(泳げるまで頑張る)、②断れること(溺れそうになったら、助けを求める)だと思います。

ベトナム人スタッフは上記の前提はまったく当てはまらない。
まず、プロ(泳げること)になりたいかというと90%はどうでもよいと考えているはずです。相応しい労働対価をもらえば、良いぐらいの感覚なので、どちらかというと仕事を辞める前提です。そして、断る能力も低いわけなので、仕事を断れない、相談もしない前提です。

だったら、ベトナム人スタッフとよりうまくやりましょう。

① スタッフに「仕事は与えます。できればたくさん挑戦してほしいので断らない方がよいが、大変と思ったら断ってね」とレクチャーする(おそらくスタッフはうんうんと頷くが、半分しか理解していないはず)
② 成果が上がらない、あるいは期日を遅れそうになったら、すぐタスクリストを出させて確認し、必要だったら、仕事量を減らしてあげる。
③ たまに、日本人のやり方に耐えれるような精神的にタフで優秀な子もいます。幹部あるいは幹部候補として、信頼される存在です。ところが、人材育成方法はそれしか分からないので、本人は自分と同じようなタフな人材を求め続けるが、なかなか採用できていない。優秀な幹部ほど、この傾向が強いので、留意が必要です。

従順な社員はわりと会社のことが好きですので、うまく育成することを願っています。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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