2017年10月11日
氏名:上野 良輔さん
会社名:KIC Vietnam
役職:General Director
山田:よろしくおねがいします。まずは自己紹介をお願いします。
上野さん:上野良輔と申します。2016年の3月にベトナムに来ました。現在日本人向けの学習塾とベトナム人向けの日本語学校を運営しており、代表を務めさせて頂いております。
山田:現在それぞれ生徒数は何名くらいいますか?
上野さん:学習塾の方は80名くらい、日本語学校は140名くらいです。
山田:1年半ですごいですね!
上野さん:日本語学校の開校は去年の10月くらいなので丸1年くらいですね。最初は10数名の生徒数からスタートしました。今年の6月頃に一気に増えました。
6月がベトナムでは一般的に夏休みに入るんですが、大学生や高校生向けに大きなキャンペーンを実施しました。道路広告やウェブ広告の出稿量を増やしたのと、日本語に触れるイベントを開催して、塾生以外の方にも日本語やKECの良さを知ってもらう機会を増やしました。
山田:なるほど。コミュニケーションで日本人のスタッフとベトナム人スタッフの違いや気を付けなければならないと思うところはなんですか?
上野さん:日本の本社ではざっくばらんに話すことを重んじる社風です。社内ネットワークで上司や社長など、自分より役職が上の人に対して、意見や改善点をあげるルールがあります。だから言いたいことが言える環境ではあるんですね。しかしベトナムに来て、同じやり方を導入したんですが、ベトナムの人は気を遣ってあまり本音を言わないので、なかなかうまくはいきませんでした。「こういうことを言ったら不利益になるんじゃないか」というふうに悪い方に想像して、あまり本音をだしてくれませんでした。
山田:現在はいかがですか?改善はしたんですか?
上野さん:ベトナムの方が本音を言わない理由はさまざまです。例えば人間関係をこじれさせたくないのもその一つです。ですので、「他の誰にも言わない」「評価に影響しない」ということを繰り返し何度も言い続けました。そうするとようやく役職の上の人から徐々に意見が上がってくるようになりました。
山田:そこで実際改善につながったことはありますか?
上野さん:非常に細かいことではありますが、掃除をちゃんとする人としない人がいるという意見が上がってきまして・・・
山田:なんだか学校みたいですね笑
上野さん:そうですね。ただ自分が上司にチクったみたいになるのが嫌だったのか、そのことを言うのを我慢していた人がいました。ただ先ほどのシステムで勇気をもっていってくれた人がいて、その事実が発覚しました。そこで、毎日昼礼があるんですが、昼礼の後にみんなで必ず掃除をするというルールを設けました。今はまだ小さな改善ですが、それらが積み重なっていけば、どんどん会社が良くなっていくと思っています。
山田:生徒との接し方やコミュニケーションとしては気を付けていることはありますか?
上野さん:ベトナムでは、先生と生徒との距離が日本よりも近いのは感じますね。日本だったら、生徒と先生がどこかに遊びに行くというのは基本的にダメだと思います。でもベトナムはそれが普通のようで、例えば授業が終わった後にカフェに行くこともあるそうです。最初は禁止していました。しかし生徒や先生から「なんでだめなの?」と言われたので、1対1でなければオッケーということにしました。
山田:それを許すことで良かったこと、逆に良くなかったことはありますか?
上野さん:良くなかったことは、その先生と親しくなりすぎて、担当が変わるとき嫌がる生徒が出てきてしまったことです。距離が近すぎることの弊害ですね。逆に良かったことは、やはり学校に愛着を持ってくれますし、その生徒の親も先生を慕ってくれるようになったことでしょうか。その方からの紹介入塾も生まれたので、その国の文化に合わせることの大切さも感じました。
山田:なるほど、生徒とのコミュニケーションに関して、新しく勤務される先生に対してどのように教育していますか?
上野さん:日本語学校でも学習塾でも一つルールがあって、生徒が来たら自分の作業は止めるように指示しています。例えば勉強の内容に質問のある生徒はそこで聞くことができますし、何もなくても雑談を通してコミュニケーションが生まれることも大切にしています。ベトナムでは先生が遅刻するということが往々にしてあるようで、他の日本語学校や大学などでもそれが普通なようです。日本語の先生たちもそういう環境で育ってきたというのがあって、当初は授業の時間になってから急いで用意したり、5分くらい遅れて入って教室に入っていったりしていました。やはり生徒のことをよく知るということは指導をする上で一番大切なことです。どういう性格なのか、どんな目的で勉強しているのか、どんな夢を持っているのか、何が好きで何に興味があるのか、そういうことを理解した上で指導をしてほしいですね。
山田:勉強の目標をたてることにも役立つわけですね。
上野さん:そうですね。例えば留学をしたいという漠然とした希望を持っている生徒がいた場合に、「じゃあ今年中にN5をとっておこう」みたいな具体的な話ができるようになりますね。
山田:あと塾の場合、保護者の方々と接することもあると思うんですけど、保護者とのコミュニケーションに関して気を付けていることはなんですか?
上野さん:良いところも悪いところも全部伝えるということですね。塾というのは特殊な産業でサービスを受けている人とお金を払う人が違うんですね。ですので、生徒が塾に満足していて「塾大好き!」って言ってくれていても、保護者の方が辞めさせるという決断をされることもあります。ですので生徒はもちろんですが、保護者の方にも状況を全て伝えるように心がけています。例えば「宿題を忘れています」とか、「小テストで点数が取れていません」とか悪いことも伝えますし、逆に褒めるべきところはしっかり褒めるという点も意識しています。
山田:ベトナム人スタッフ・生徒・保護者と世代や国籍も違う方々と普段接しておりますが、コミュニケーションに関して一貫して重要視していることはなんですか?
上野さん:生徒であればKICを卒業した後、スタッフであればもしKICを辞めてしまった場合でも、自立して歩んでいける人材を育てるということを強く意識しています。KICで学んだことを次のステージでも生かしてもらえたらうれしいです。
山田:それは例えばどんなことですか?
上野さん:基本的なことだと、報連相やスケジュール管理でしょうか。スタッフによくあることですが、仕事をお願いしたときに進捗報告をしてくれるスタッフは少なかったですね。こちらとしては進んでいるかどうかが判断できなくて困りました。また期日があるものに対して、当日になって間に合いません、と言われることも多かったです。そういう基礎的なことを、言い続けることで徐々に変化が見えてきました。その力は、万一他の会社へ転職したとしても必ず生きるでしょう。
山田:最後にこれを読んでいる今後ベトナムに参入される方々にコミュニケーションに関してアドバイスがもしあればお願いします。
上野さん:まずは「諦めない」ということですね。「これを言わせるのは何回目!?」みたいなことが多くあります。あきらめずに言い続けていくと、少しずつ変わってきている実感はあるのでぜひその点はお伝えしたいですね。また自分自身が手を抜かずにやるということですね。KICの教室ルールとして、「挨拶をきちんとしよう」「約束を守ろう」などの行動規範があります。それを自分が破っていたら指導ができないので、まずは自分たちスタッフが徹底することは強く意識してますし、スタッフにも意識させています。
―――――
プロフィール
吉田綾華(よしだ あやか)
E-mail: ayaka.yoshida@hrnavi.com
Tel: 0968096784
1987年生まれ、石川県出身。
人の役に立ちたい!という想いから、東南アジアと人材の軸で仕事を探し、2013年からアイグローカル・リソースに入社。自らの海外就職の経験とホーチミン、ハノイの両拠点での勤務経験を生かし、お客様と登録者の懸け橋となりアドバイスを行っている。